一人では回復できない
薬物依存症の陽子です。小学校に入学する前から人間関係でどこにいてもなんとなく独りぼっちという思いでした。保育園でも、おばあちゃんの家でも周りに人はいるけれど遠く感じていました。人と仲良くなってもその関係を続けられず、仲良くしようと思うのに私がとる行動は離れることでした。
高校2年生の時から食べ方がおかしくなりました。なぜかいつも食べ物の事が気になりました。いつも何か食べたい。でも食べると太ってしまう、という囚われ。食べても食べなくても満足しない。痩せたいのか、食べたいのか訳が分からなくなりました。この事で困っているのに、相談せず自分で自分の悩みに答えを出していました。過酷なダイエットをして痩せて一瞬安心するのですが、すぐに繰り返し大量の食べ物を食べる。次はアルコールを飲むことで痩せる。薬物を使う事で痩せる。とにかく痩せれば人間関係もうまくいくと思っていました。けれど、や痩せても私は満足しなかったし、達成感もないし、幸せでもありませんでした。目の前の人との関係を築いていけませんでした。
薬物を使うようになったのは、17歳の時でした。薬局で販売している咳止め、鎮痛剤、鎮静剤を使うようになりました。付き合っている男性に「使ってみる?」といわれ、使っている本人が目の前で楽しそうにしていたので抵抗なく使いました。真面目に生きてきた自分には「薬中」が特別な存在に見えました。私もそうなりたいと思いました。合法な薬から違法な薬まで色んな物を使っていきました。もっと薬物絡みの人間関係を広げたい。もっと得をする売人はいないか。もっとお金儲けをすることはないか。もっともっと…と欲深くなっていきました。5年間使い続け、体から薬物が抜けることはほとんどありませんでした。
22歳の時、覚醒剤を使う事が出来ないくらい体がしんどくなりました。ベッドから降りるのがつらくて、薬を体に入れても動けませんでした。絶望的でした。何も使えない。何も効かない。どうしたらいいのか分からない自分は精神科で覚せい醒剤の代わりの薬を出してもらえないかと思い期待して受診しました。しばらく通院しましたが覚醒剤が使いたくなりました。なぜかというと、薬物を使っていた生活とは違い、淡々とした生活や自分の空しさなどに耐えられませんでした。薬物仲間の所へ行き薬を使いましたが思うように使えなくなっていました。
今まで通っていた精神科の先生は薬物依存症の事に詳しい先生でした。そこの病院には自助グループのミーティングが入っていたり依存症の勉強会があったり、ダルクの仲間、自助グループの仲間と出会えるきっかけを作ってくれました。しかし病院でも男性問題、処方箋薬の大量服薬、院内飲酒など次々に問題行動を起こしました。主治医からダルクを勧められて、ダルクのプログラムが合わなかったらまた一緒に考えましょう、と言ってもらったのが安心になりダルクへ行くことを決めました。
22才歳でダルクに入寮しました。ダルクへ入所してすぐにホームシックになりました。いつ施設を出ようか、コンビニに行けばお酒に目が留まり「飲みたい」という気持ちでいっぱいになりました。いつまでこれが続くのか、一日一日がすごく長く感じました。スタッフの人には「今日一日ベストを尽くしましょう、過去はもう過ぎ去ったし、未来はまだ来ないし、今日の今この時間を大切にしましょう」と言われ渋々仲間と一緒にリハビリをしました。
依存症の病気は、ただ薬を使う事、お酒を飲むことだけが問題ではないことが分かりました。私は薬をやめて素面で生きる事が大変でした。薬をやめれば後は穏やかに過ごせるのかと思っていましたがそうではありませんでした。それまでは薬を使って問題解決をしてきたことが出来なくなったので、どうやって悪感情などを受け止めたらいいのか分からないし、そうなるといつも破壊の方向へ行き「どうせ私なんか…」となり誰とも関係を築くことが出来ずどこにも所属することが出来ませんでした。
ダルクのプログラムにミーティングというものがあります。そこでそれぞれの体験した話を聞いていると私と同じ体験や気持ちを話している仲間に出会います。「わたしも同じ!」と思うと、その人がその状況をどうやってプログラムを使って乗り越えていったのか、そこの話にクギ付になりました。そこまでくるのに相当時間がかかりました。どうしてかというと「私の考えの方が正しい」「私は間違っていない」「おかしいのはあの人だ」と言いはしませんがそう思っていました。自分の生き方考え方を変えようとプログラムに取り組まなかったので、薬を使っていなくても自分自身の生きづらさからは解放されませんでした。
今は…。依存症は完治しない病気ではありますが、沢山の仲間に出会い生き方をお互い学び続けています。本当に一人では回復できないことを知りました。回復プログラムに先に繋がっている仲間、同期につながった仲間、あとから繋がった新しい仲間が自分には大切な存在です。地味に幸せです。